2025年施行開始の「建築基準法改正」がちょっと大変?

日本で住宅やビルなどの建物を建てる際に守らないといけない法律として「建築基準法」というものがあることはご存知ですか?

注文住宅の購入を検討している人なら耳にしたことがあるかもしれませんね。

この建築基準法という法律は1950年に制定され、「より安全で、より安心な住まいや町づくりのため」に、地震などの大きな災害が起こる度に改正が繰り返されてきました。

これまでの改正で最も大きな改正は、「基礎構造を鉄筋コンクリート造にすること」や、「木造住宅において必要な壁量(壁が多い方が基本的に強い家になりますね)の規定が初期の2倍」に強化された1981年6月の改正です。

住宅業界では、これ以前を「旧耐震基準」、それ以降を「新耐震基準」と呼びます。
特にこれから中古住宅の購入を検討される方は、1981年6月以降に建てられた「新耐震」の家かどうかを確認することが大事になってきますね。

さて、そんな私たちの命を守るために制定されている建築基準法ですが、2025年の4月に再度改正されることが決まっています。

マイホームを検討されている人や、これから住宅購入に向けて動き出そうという方にどのような影響があるのか、いくつか変更点をまとめてみたいと思います。

  • そもそも家づくりの流れは?
  • 2025年4月の改正理由は?
  • 改正されるポイントは?
  • 改正によるメリットとデメリットは?

家づくりの流れ

まず、建築基準法について触れる前に「家を建てるための手続きや手順」について触れておきます。

①最初は、土地探しからスタートして

②デザインや性能で、自分好みの住宅会社を選んで

③設計士やインテリアコーディネーターと間取りやプランを決めて

④いざ! 建築スタート!

・・・といきたい所ですが、プランが決まってすぐに建築はできません。
設計・プランを固めたら役所や検査機関の審査を受ける必要があります。

これを「建築確認申請」と呼びます。

この確認申請が通過して「検査済証」という書類を発行してもらわないと建築はスタートできないんです。

こちらのページで分かりやすくスケジュールがまとめられているので、一度確認してみましょう。

https://abc-housing.asahi.co.jp/intro/step.html

2025年4月の「建築基準法」改正理由は?

次に、今回なぜ建築基準法が改正されるのか、気になるところですよね。

前述の通り、建築基準法の改正というのは震災などに大きく影響を受けてきました。
ですが、今回の改正は少し毛色が異なります。

主な改正理由は国土交通省の資料https://www.mlit.go.jp/common/001576404.pdfをみる限り、大きく分けて以下の2点になりそうです。

理由その① 建物の倒壊防止のため

一つ目は、建物の倒壊や火災のリスクをこれまで以上に減らすためです。

これまでは、500㎡以下かつ2階建て以下の木造住宅(これを業界では「4号建築物」と呼び、日本の一般住宅の多くがこれに該当します)は、建築確認申請の際の構造計算書という書類がなくてもよいという法律でした。

しかし、ここ数年相次いだ震災でこの4号建築物が倒壊するという事例が発覚し、新たな基準を設ける必要性が出てきました。

今まで建物を建てる際に「省略」できていた審査や計算が、今後は「省略できない」ケースが増えます。

つまり、建築前の審査を厳しくすることによって、より安全な構造の建物だけを建てましょうという理解で良いと思います。

理由その② 省エネ対策のため

二つ目は環境への配慮という観点からです。

日本では2021年4月に、「2030年までの温室効果ガス46%削減」や「2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出量ゼロ)」など、地球温暖化対策等の削減目標が強化されました。

これを受けて、国土交通省では"国内のエネルギー消費の約3割を占める住宅・建築分野での省エネ対策が求められている"としています。

今回の改正では、建築物全体もしくは部分的な木造化が推進され、断熱の強化や壁量の増加など木材の利用促進が今まで以上に求められることになるようです。

2025年4月に改正されるポイントは?

今回の改正は上記の目的を達成するため広範囲に及びますが、
その中で特に住宅購入を検討されている方に影響が大きいと思われるポイントをいくつか抜粋してみます。

●4号特例の範囲縮小

上述したように、これまで「4号建築物」と言われる木造2階建て以下の建物については、構造計算を省略してスムーズに建築に入れるような仕組み(いわゆる4号特例)になっていました。

でも、そこの簡略化が求められていたのはバブル期のような建築ラッシュで審査や検査が追い付かないような時代の話。

より確実に安全性能を確保するため、2025年4月以降は200㎡以下の平屋以外は、確認申請と併せて構造計算書も一緒に提出しないと審査されなくなります。

●小規模の木造住宅・建築物の構造基準見直し

近年、断熱材の増量化、ガラスサッシの重量化、太陽光発電設備等の設置など住宅はどんどん重くなっています。

重くなれば、少ない壁や細い柱では大地震に耐えることができないので、きちんと重量を計算してそれに見合った壁の数や柱の本数を決めましょうということです。

また、木材には温室効果ガスを吸収する効果があり、省エネ対策のひとつとしても木材利用の促進が一役買います。

そのため、基本的には木材の使用が増える見込みで、その分安全になるし省エネ対策にもなると言えそうです。

●省エネ基準の適合が義務化

これは厳密にいうと建築基準法ではなく「建築物省エネ法」という法律になりますが、同じタイミングで改正されるので併せて知っておく必要があります。

2022年頃まで新築住宅の最高基準とされてきた「省エネ等級4」が、2025年4月以降は全ての新築住宅に課せられます。

実はこれまで住宅では"届出"さえしていればよかった省エネ基準ですが、今後すべての新築住宅において、省エネ基準(等級4以上)への"適合"が義務付けられることになります。

「構造計算書」などの構造に関する資料だけでなく、「省エネ関連図書」の提出も多くなりそうですね。

大規模改修(スケルトンリフォーム)等で建築確認書を提出しなければならない物件の場合、断熱強化も義務化され、新築並みの省エネ等級をクリアしなければ、建築申請が通らないということも言われています。

改正によるメリットとデメリット

では、今回の改正は住宅購入を検討する人にとってメリットなのかデメリットなのか。

主観も入りますが、下記のような感じになると思います。

メリット

  • より地震や火災に強い家を建てられる
  • どの工務店やハウスメーカーで建てても不安が少ない
  • 断熱性能の底上げにより、すべての新築住宅が快適に
  • 環境に配慮した家を建てられる

デメリット

  • 構造計算書や省エネ性能確保計画書など追加の書類が増える
  • それにより、審査が長期化し、書類作成の費用が上乗せされる可能性も
  • 木材や部材を多く使う(壁量増加、断熱強化)ため建築費用が増える

考え方次第でどちらとも取れそうですが、安心安全のために購入者の負担が大きくなるというのが私の印象です。

ただ、一部の工務店や大手住宅メーカーと呼ばれる建築会社では、現時点で既にこの新しい建築基準に対応している企業も少なくありません。

そういった企業からすると今までもたくさん木材は使用しているし、耐震性能や省エネ性能も建築基準法の改正を見越して設計・建築しているので、今までと変わらないよ、というわけです。

そんな心強い建築会社と出会うために、ぜひ一度住宅展示場に足を向けてみてはいかがでしょうか。

素敵な営業さんがあなたを出迎えてくれますよ。