令和5年9月19日、国土交通省より2023年の都道府県地価調査(7月1日時点)が公表されました。
地価調査によると、全国の全用途(住宅地、商業地、工業地)平均は前年から1.0%上昇し、22年から2年連続での上昇となっています。
本コンテンツでは、近畿圏に焦点を当てて都府県別にご紹介していきたいと思います。
~大阪府~
大阪府の地価は、令和4年7月1日からの1年間で、住宅地は平均変動率がプラス1.3%(前年はプラス0.4%)と2年連続の上昇となった。また、商業地はプラス4.3%(前年はプラス1.6%)と2年連続の上昇となりました。それぞれ上昇率もUPしておりコロナ禍を経たインバウンドへの期待の高まりが伺えます。
商業地で最も上昇率が高かったのは、▼大阪市福島区福島6丁目の11.5%で、JR大阪駅の北側、「うめきた」エリアで進められている再開発への期待が波及した形です。
また、上昇率10位のうち、大阪市西区の土地が5か所入るなど、都心部に近い地点でホテルや高層マンション向けの土地の需要が高まっていることが反映されました。
商業地で最も高かったのは、▼大阪市北区大深町207番外(グランフロント大阪南館)で1平方メートルあたり2200万円でした。
一方、住宅地で最も上昇率が高かったのは、大阪市福島区鷺洲5丁目の6.6%でした。
住宅地は交通の利便性による価格の二極化が進んでいて、岬町などでは下落率が大きくなる地点が目立ちました。
~京都府~
京都府の地価は、令和4年7月1日からの1年間で、住宅地は平均変動率がプラス0.5%(前年はマイナス0.2%)とプラスに転じています。また、商業地はプラス3.0%(前年はプラス1.4%)と2年連続の上昇となっています。
住宅地で最も高かったのは13年連続で▼京都市上京区の勘解由小路町で、2.3%上昇して、1平方メートルあたり68万円でした。
そして、上昇率が最も高かったのは、▼京都市中京区の壬生土居ノ内町で、6.6%の上昇でした。
また商業地で最も高かったのは、▼京都市下京区の御旅町にあるみずほ銀行四条河原町出張所で、1平方メートルあたり900万円でした。
上昇率が最も高かったのは▼京都市東山区の祇園町にある豊田愛山堂で、11.5%の上昇でした。
新型コロナによる行動制限がなくなり、観光客数が回復していることによって、特に京都市内の商業地で、ホテルやマンション、店舗の需要が高まり、全体の価格を押し上げたことが主な要因とみられます。
加えてことしの地価調査では観光地、なかでも京都市内の人気のスポットで大幅な上昇がみられました。
京都市東山区の八坂神社に近い祇園町では、去年より11.5%も上昇し、府内で最も高い上昇率となりました。
また、「京の台所」として知られる京都市中京区の錦市場では9.4%の上昇。
赤い鳥居が連なる千本鳥居で知られる京都市伏見区の伏見稲荷大社の門前では8.6%上昇しました。
一方、京都市外では、住宅の1階部分が船の置き場になっている「舟屋」が建ち並ぶ風景が人気の伊根町の平田地区で4.5%の上昇となりました。
~兵庫県~
兵庫県の地価は、令和4年7月1日からの1年間で、住宅地は平均変動率がプラス0.6%(前年はマイナス0.1%)とプラスに転じています。また、商業地はプラス1.7%(前年はプラス0.4%)と2年連続の上昇となっています。
住宅地において上昇率が最も高かったのは▼神戸市灘区楠丘町の6.5%で、JRと私鉄の両方に近く、利便性が高いことなどから大きく上昇しました。住宅地で最も価格が高かったのは、3年連続で「芦屋市大原町」で、価格は1平方メートルあたり65万5000円でした。
神戸市東部や阪神間では需要が根強い一方、供給は不足気味で、上昇率の拡大傾向が続いています。
また、その影響で、周辺でも平坦で駅に近いなどといった利便性の高いところを中心に地価の上昇地域が拡大していて、明石市と伊丹市ではすべての調査地点で上昇したほか、尼崎市と芦屋市でも下落地点がゼロとなりました。
また商業地において最も価格の高かったのは、6年連続で▼神戸市中央区三宮町1丁目の三宮センター街入り口付近で、1平方メートルあたり645万円となりました。ただ、新型コロナ流行前の価格までは回復していません。
~奈良県~
奈良県の地価は、令和4年7月1日からの1年間で、住宅地は平均変動率がマイナス0.8%(前年はマイナス1.0%)と15年連続で下落となりました。また、商業地はプラス0.9%(前年は±0.0%)と令和元年以来、4年ぶりの上昇となっています。
住宅地で最も高かったのは、▼奈良市学園北1丁目の30万4000円で、商業地では▼奈良市東向中町の92万円が最も高い地点となっています。
奈良県で特徴的なのは工業地の上昇で、上昇率が最も高かったのは、▼大和郡山市今国府町97番3外の昭和工業団地の「大和まほろばスマートインターチェンジ」の北側にある土地で、5.6%でした。
これは災害リスクが比較的少ない内陸であることが評価され、高速道路などのインフラが充実している工業団地を中心に需要が高まっていることが主な理由です。
~滋賀県~
滋賀県の地価は令和4年7月1日からの1年間で、住宅地は平均変動率がマイナス0.4%(前年はマイナス0.9%)と下落幅の減少が見られています。また、商業地はプラス0.6%(前年は±0.0%)と4年ぶりに上昇に転じています。
住宅地でもっとも上昇率が高かったのは▼守山市今宿1丁目のプラス4.7%で、価格は13万3000円でした。
一方商業地でもっとも上昇率が高かったのは、▼栗東市綣3丁目のプラス4.3%で、1平方メートルの価格は19万3000円でした。
~和歌山県~
和歌山県の地価は令和4年7月1日からの1年間で、住宅地は平均変動率がマイナス0.8%(前年はマイナス1.1%)と33年連続で下落となりました。また、商業地はマイナス0.5%(前年はマイナス0.9%)と32年連続の下落となりました。
住宅地においては去年10か所だった上昇地点が21か所になるなど、幹線道路の新たな整備や和歌山市中心部へのアクセス性の向上による好影響が出ています。上昇率が最も高かったのは、▼住和歌山市関戸1丁目で、1.8%の上昇となっています。
商業地では去年6か所だった上昇地点が10か所に増え、商業地でJR和歌山駅東口の再開発が計画されている地区、▼和歌山市太田2丁目で、1.0%の上昇となりました。
とくに和歌山市の商業地の平均は、4年ぶりに地価が上昇に転じるなど、県内でも地価の二極化が鮮明になっています。
~三重県~
三重県の地価は令和4年7月1日からの1年間で、住宅地は平均変動率がマイナス0.5%(前年はマイナス1.0%)で31年連続の下落となっています。また、商業地はマイナス0.1%(前年はマイナス0.8%)で32年連続で下落となっていますが、双方下落幅の減少が見られています。
一方、工業地はプラス1.5%と2年連続の上昇となり、上昇率も前の年と比べて拡大しました。
住宅地において上昇率がもっとも高かったのは▼桑名市松並町2丁目のプラス3.6%で、1平方メートル9万5千500円でした。
商業地では▼桑名市寿町2丁目のプラス4.0%が最も上昇率が高く、1平方メートル25万7000円でした。
全国的には半導体工場の誘致に沸く熊本(TSMC)や北海道(ラピダス)、コロナ回復後のインバウンド需要を狙う観光地(外国資本の投資など)での地価上昇が鮮明になっています。
日本で”地価”と言うと「地価公示」と「地価調査」に加えて「路線価」の3つをイメージされるかと思いますが、今回は各都道府県が調査主体となり、7月1日時点の評価で行う「地価調査」をもとにまとめてみました。
不動産業界だけでなく一般の方の関心も高い情報かと思いますので、皆様自分の住んでるエリアや、仕事上所縁のあるエリアなどは一度チェックされると良いでしょう。